【2026年版】委託先のAI利用リスクとは?契約・監査で押さえるべき4つの管理ポイント
結論
委託先によるAI利用が不透明な場合、禁止よりも「把握と条件付け」から始めることが現実的です。契約・確認項目・運用ルールを最小限でも整えることで、監査対応と事故防止の両立が可能になります。
なぜ委託先のAI利用が問題になりやすいのか
委託先のAI利用は、自社よりも把握が遅れやすく、説明責任を果たしにくい点がリスクです。
現場でよくある状況として、以下のようなケースが挙げられます。
- 業務委託先が生成AIや分析AIを使っているか把握できていない
- 契約書にAI利用に関する記載がない
- データの再利用や学習利用の可否が不明確
- 監査で「その成果物はどう作られたのか」と聞かれて答えられない
業務を外部に委託しても、最終的な説明責任は委託元企業に残るのが一般的な考え方です。そのため、委託先のAI利用はガバナンス上の盲点になりがちです。
用語解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 委託先AI利用 | 業務委託先が、自社業務の遂行過程でAI(生成AI、予測モデル等)を使うこと |
| サードパーティリスク | 外部委託先やベンダーに起因する情報漏えい・品質・法令リスク |
| 説明責任 | 業務結果や判断の根拠を、社内外に合理的に説明できる状態 |
委託先のAI利用を把握・管理する4つのステップ
ステップ1:AI利用を契約上の論点として位置付ける
まず、AI利用を契約上どう扱うかを決めます。多くの企業では、次のどちらかのアプローチを採用しています。
| アプローチ | 内容 |
|---|---|
| 原則禁止型 | AI利用は原則禁止とし、事前申請で例外許可 |
| 条件付き許可型 | AI利用は原則許可とし、条件と報告義務を課す |
業務内容や委託先の成熟度に応じて、適切なアプローチを選択することが重要です。
最低限決めておきたい論点
- AI利用の有無を申告させるか
- 利用する場合の条件(用途・データ範囲)
ステップ2:契約書・覚書で押さえるべき項目を明確にする
詳細な技術説明を求めるより、管理可能な論点に絞ることがポイントです。実務でよく使われる確認項目は以下の通りです。
- AI利用の有無:利用する場合は事前通知を義務付ける
- 入力データの範囲:個人情報・機密情報の扱いを明確化
- 成果物への責任:AI利用の有無にかかわらず、成果物責任は委託先にある旨を明記
- データの再利用・学習利用の可否:「要確認」と明記するだけでも有効
- 監査・説明協力義務:必要に応じた対応を義務付ける
※ 実際の条文化は法務部門や専門家との確認が必要です。
ステップ3:委託先向けの確認シートを作成・運用する
契約だけでなく、運用上の定期的な確認も重要です。年1回や契約更新時に、以下のような簡易チェックを行いましょう。
確認シートの項目例
- 現在、業務でAIを使用していますか
- 使用しているAIの種類(生成AI/分析AI 等)
- AIに入力するデータの種類
- 出力結果の利用方法(参考資料として利用/自動処理に組み込み)
定期的な確認を行うことで、「知らないうちに使われていた」という状況を防げます。
ステップ4:リスクレベルに応じた追加対応を検討する
すべての委託先に同じ管理レベルを適用する必要はありません。一般に、以下の条件が重なるほど注意が必要とされています。
- 個人情報や機密情報を扱っている
- 成果物がそのまま意思決定に使われる
- 委託先が再委託・再利用している
リスクが高いケースでは、利用制限の強化、追加説明の要求、別契約の締結などを検討します。
注意点:管理のやり過ぎに注意
委託先のAI利用を管理する際は、以下の点に注意してください。
- 全面禁止は逆効果:禁止すると、かえって実態が見えなくなる
- 過度な説明要求は形骸化を招く:委託先に負担をかけすぎると、形式的な対応になりやすい
- AIモデルの詳細まで求めない:技術的な詳細を求めても、現実的に把握できないケースが多い
多くの企業では、「把握でき、説明できる範囲」を現実的な落とし所としています。
すぐ使えるチェックリスト
以下のチェックリストを活用して、自社の対応状況を確認してみてください。
- [ ] 委託先AI利用を契約論点として整理した
- [ ] AI利用の申告義務の有無を決めた
- [ ] 入力データ範囲(個人情報・機密)を明確にした
- [ ] 成果物責任が委託先にあることを確認した
- [ ] データ再利用・学習利用の扱いを確認した(「要確認」でも可)
- [ ] 定期的な確認シート運用を決めた
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- 委託先のAI利用は「見えないリスク」になりやすい:自社よりも把握が遅れがちで、ガバナンス上の盲点になる
- 禁止より把握・条件付けを優先する:全面禁止は逆効果。説明可能な状態を目指す方が現実的
- 契約・確認・運用を最小セットで整える:完璧を目指すより、まず最低限の仕組みを作ることが第一歩
参考情報
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法務・監査の個別助言ではありません。最終判断は社内ルールおよび専門家にご確認ください。