【2026年版】AIインシデント対応マニュアル|情シス・リスク管理者が今すぐ準備すべき4ステップ
結論
AI利用において最も重要なのは、「事故は起こり得る」という前提で備えることです。
完璧な予防を目指すよりも、インシデント発生時に被害を最小限に抑え、適切に説明できる対応手順をあらかじめ整備しておくことで、現場と経営の混乱を防げます。
なぜAIインシデント対応が必要なのか
AIは便利なツールですが、人間と同様にミスや想定外の動作を起こす可能性があります。
現場で起きやすいAIインシデントの具体例
| インシデントの種類 | 具体的なケース |
|---|---|
| 誤出力の業務利用 | 生成AIが誤った内容を出力し、そのまま顧客対応に使用された |
| 情報漏えいリスク | 機密情報を含むデータを誤って外部AIに入力してしまった |
| 判断ミスの連鎖 | AIの判断を前提に業務を進めた結果、後から誤りが判明した |
| サプライチェーン問題 | 委託先のAI利用が原因で説明を求められたが、状況を把握できていない |
AIが関与していても、事故対応や説明責任は組織に残ります。だからこそ、AI特有のインシデント対応を事前に整理しておく必要があるのです。
用語解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| AIインシデント | AIの利用により発生した誤判断・情報漏えい・業務影響などの事象 |
| 初動対応 | 事故発生直後に行う、被害拡大を防ぐための対応 |
| 影響範囲 | 誰に、どの業務に、どの程度の影響が出たか |
| 再発防止 | 同じ事故を繰り返さないための対策 |
AIインシデント対応の基本4ステップ
ステップ1:「AIインシデント」の定義を明確にする
ポイント:何をインシデントとして扱うかを事前に決めておきます。
定義が曖昧だと報告が遅れ、被害が拡大するリスクがあります。
インシデント定義の例
- AIの誤出力により業務判断に影響が出た
- AI利用により情報管理ルールに違反した可能性がある
- 社外から問い合わせ・苦情が発生した
まずは**「迷ったら報告」**という基準を組織内で共有することが重要です。
ステップ2:初動対応をシンプルに決める
ポイント:最初の対応は**「止める・守る・知らせる」**の3つに集中します。
| 対応項目 | 具体的なアクション |
|---|---|
| 利用停止 | 該当AIや関連業務を一時停止する |
| 証跡保全 | ログ、入力内容、出力結果を保存する |
| エスカレーション | 情シス、リスク管理部門、上長へ速やかに連絡する |
技術的な原因分析は、初動対応が落ち着いてからで問題ありません。
ステップ3:影響範囲と事実関係を整理する
ポイント:推測ではなく、事実ベースで整理します。
整理すべき項目
- いつ、どの業務で発生したか
- どのようなデータを入力したか(概要レベルで可)
- 出力結果はどこまで業務に使用されたか
- 社外への影響があるか
不明点は「調査中」「要確認」と明記することで、誤った情報の拡散を防げます。
ステップ4:再発防止とルール見直しにつなげる
ポイント:インシデントはガバナンス改善の貴重な材料です。
再発防止策の例
- 入力禁止データの明確化
- ログ取得・レビュー手順の強化
- 高リスク用途での利用条件見直し
- AIポリシーや教育内容の更新
「誰の責任か」を追及するより、**「仕組みをどう改善するか」**に焦点を当てることが重要です。
AIインシデント対応でよくある3つの失敗
| 失敗パターン | 問題点 |
|---|---|
| 技術原因の特定にこだわりすぎる | 初動対応が遅れ、被害が拡大する |
| 現場判断で隠してしまう | 組織としての対応が後手に回る |
| 従来のIT事故対応と完全に切り分ける | 既存の知見やフローを活かせない |
多くの企業では、既存の情報セキュリティ事故対応フローをベースに、AI特有の論点を追加する形が現実的なアプローチとされています。
すぐ使えるチェックリスト
以下のチェックリストをコピーして、自社の対応準備状況を確認してください。
□ AIインシデントの定義を決めた
□ 「迷ったら報告」の基準を組織内で共有した
□ 初動対応(停止・保全・連絡)の手順を整理した
□ ログ・証跡の保存方法を決めた
□ 影響範囲の整理項目を用意した
□ 再発防止策をルール・教育に反映する方針を決めた
まとめ
- **AI事故は「起こり得る前提」**で備えることが重要
- 初動対応はシンプルに、事実ベースで整理する
- インシデント対応は、AIガバナンスを強化する機会と捉える
事前の準備が、いざという時の組織の対応力を大きく左右します。
参考資料
- 経済産業省:AI事業者ガイドライン(第1.0版)
- 経済産業省:AI事業者ガイドライン(PDF)
- NIST:AI Risk Management Framework
- OECD:AI Principles
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法務・監査の個別助言ではありません。最終判断は社内ルールおよび専門家にご確認ください。