いま社内AI勉強会の主戦場は「エージェント化」と「統制」
2025年後半から、主要プロダクトは「チャットで文章を作る」から、手順を自律的に進める エージェント(Agent) へ重心が移っています。
一方で、業務で使うほど事故(機密入力、過剰共有、シャドーAI)が増えるため、DLP・監査ログ・権限管理・ポリシー周知といった ガバナンス が同時に強化されています。
要点:社内勉強会のネタになりやすい最新トピック8選
1) Microsoft 365 Copilot:Officeアプリの「Agent Mode」が前提になってきた
何が新しい?
- WordのAgent Modeが一般提供(GA)として語られ、Excelは推論モデルの選択肢(Anthropic / OpenAI)が示されています(機能の提供形態はプログラムや展開条件に依存)
勉強会の論点
- "うまいプロンプト"より、(1) 参照データの置き場(SharePoint等)、(2) 権限、(3) 出力のレビュー責任が成果を決める
- アプリ内で完結するほど、出力の正しさより「根拠がどこから来たか」を説明できる運用が必要
ミニデモ案
- "社内規程のドラフト"を題材に、1回で完成させず、Agent Modeで「参照範囲→体裁→例外処理→承認者向け要約」の順に詰める
2) Copilot Studio:Human-in-the-loop が「エージェント標準設計」になりつつある
何が新しい?
- Copilot Studioの更新で、ガバナンス/監督の強化や、GPT-5 Chat の本番利用(地域限定でGA)が明記されています
- “人に確認してから続行する” という Human-in-the-loop(HITL)を前提に、業務向けエージェントの設計が語られています
勉強会の論点
- 自動化(ボタン押すと動く)と自律化(状況判断して進める)は別物。自律化するほど、どこで止めるか(承認点)が重要
- “誰が最終責任者か” を先に決めないと、便利なデモほど現場に降りません
ミニデモ案
- "対外メール作成エージェント"を想定し、(1) 下書き、(2) 個人情報や契約表現の確認で停止、(3) 承認後に送信準備、というHITLの設計図をホワイトボードで作る
3) Microsoft Purview:ついに「プロンプト」自体をDLPでブロックする発想が製品化
何が新しい?
- Microsoft Purview DLP for Copilot prompts は、プロンプトに機微情報が含まれる場合に Copilot/エージェントの応答をブロックし、社内データのグラウンディングやWeb検索に機密が使われないようにする、と説明されています(公開プレビュー開始は2025年11月、GAは2026年Q1予定)
勉強会の論点
- “入力しないで” は運用で崩れます。入力しても止まる(またはマスクされる)設計が現実的
- どの情報を止めるか(例:顧客ID、口座、未公開決算、健康情報)を部門横断で合意できるかがカギ
ミニデモ案
- 「うっかり入力」例を3つ作り、(1) ブロックすべき、(2) 例外が必要、(3) そもそも業務プロセスを変える、に分類するワーク
4) Microsoft 365:IT部門が"使い方の周知"を製品内メッセージで回す流れ
何が新しい?
- Microsoft 365管理センターの Organizational messages(組織メッセージ)が、利用状況に応じたターゲティングや、チャネル拡張などの強化予定として紹介されています
- Copilotの最新まとめでも、管理機能(ダッシュボード、監査ログ強化など)が同じ文脈で語られています
勉強会の論点
- AIは「ルールを作る」だけでなく「定期的に見せる」ことで事故率が下がる
- 周知を"気合い"ではなく、製品内の導線に載せるのが2025年以降の実務トレンド
ミニデモ案
- “社内AI利用10カ条” を作り、(1) 初回オンボーディング、(2) 月次リマインド、(3) 事故が起きやすい画面(共有/外部送信)での注意、の3レイヤーで設計する
5) ChatGPT:アプリ(旧コネクタ)時代に入り「接続の許可」と「監査ログ」がセットになった
何が新しい?
- ChatGPTに アプリディレクトリ が導入され、承認済みアプリを追加できる流れが明記されています
- Compliance Logs Platform として、監査・認証・Codex等を含むログの統合的エクスポート(不可変・時間窓JSONL)が案内されています
勉強会の論点
- 便利な連携は、便利な"抜け道"にもなる。アプリ許可(誰が何を使えるか)とログ(何が起きたか)を同時に設計する
- 「個人の工夫」から「会社として許可する連携」へ移るタイミングで、棚卸しが必須
ミニデモ案
- "許可するアプリ"を (A) 全員OK、(B) 条件付き(閲覧のみ等)、(C) 原則NG に分け、判断基準(データの種類・書き込み権限・ログ可視性)を決める
6) ChatGPT:社内AIポリシーを「30日ごとに表示」して周知を仕組み化
何が新しい?
- 管理者が Workspace の設定から AIポリシーをモーダル表示として設定でき、ユーザーに30日ごと(または更新時)に表示される、と説明されています
勉強会の論点
- ルール周知は"読ませた証跡"が実務では効く(内部統制・教育の観点)
- ポリシーは長文より「3つの禁止」と「困ったときの連絡先」が効く
ミニデモ案
- ポリシー本文を200文字以内に圧縮するワーク(例:機密入力禁止、出力の最終責任、外部共有時の承認)
7) Google Meet:会議中の「Ask Gemini」で要点・決定・ToDo抽出が標準機能化
何が新しい?
- Ask Gemini in Google Meet が Enterprise Standard/Plus へ展開され、会議の要約・決定事項・アクション抽出などが説明されています
勉強会の論点
- 会議は"AIの費用対効果"が出やすい一方、議事録の共有範囲や保存方針で揉めやすい
- 先に「決定事項の書式」を決めると、AI要約の品質が安定する
ミニデモ案
- 勉強会自体の議事録を、(1) 決定、(2) 宿題、(3) リスク、(4) 次回議題 の4枠テンプレで出す運用を試す
8) EU AI Act:「AIリテラシー義務」が既に開始。社内勉強会の"正当な理由"になる
何が新しい?
- EU AI Act のタイムラインとして、2025年2月2日に一般規定(定義・ AIリテラシー )と禁止事項が適用開始、と整理されています
- 欧州委員会の説明ページでも、禁止事項が2025年2月に有効化された旨が明記されています
勉強会の論点
- 日本企業でも、EUで事業・取引がある場合は"教育(リテラシー)"を求められる場面が現実にある
- "全社員に同じ研修"より、(1) 一般社員、(2) 管理職、(3) AIを業務に組み込む担当、で内容を分けると効果的
ミニデモ案
- 自社のAI利用を「作る(開発/調達)」「使う(運用)」「監督する(法務/監査/IT)」に分け、各ロールのリテラシー項目を洗い出す
比較:勉強会で押さえるべき"3社の方向性"まとめ
| ベンダー | 主な方向性 |
|---|---|
| Microsoft | Office内の エージェント化 + Purview/管理センターで 統制の同時強化 |
| OpenAI(ChatGPT) | アプリ連携を広げつつ、 許可管理 と 監査ログ基盤 を前に出す |
| 会議の生産性(要約/ToDo)を入口に、日常業務へAIを浸透 |
具体例:そのまま使える「90分の社内 AI勉強会」台本(テンプレ)
1. イントロ(10分)
- 今日のゴール:自部署で “繰り返し使えるAIの型” を1つ決める(例:議事録、週報、問い合わせ一次回答)
2. ニュース共有(20分)
- Agent Mode(Microsoft)+ アプリディレクトリ(ChatGPT)+ Ask Gemini(Meet)を"入口"として紹介
3. ミニワーク(30分)
- 「AIで自動化したい業務」を3つ出す
- それぞれに対し、(A) 自動で良い、(B) HITL必須、(C) そもそも禁止 を判定
4. ガバナンス設計(20分)
- 入力(プロンプト)・参照(社内データ)・出力(共有/対外送信)の3点で、DLP/承認/ログの要件を決める
5. まとめ(10分)
- EU AI Act の AIリテラシー を"勉強会を続ける理由"として社内に説明できる形に落とす
参考ソース(一次情報中心)
- Microsoft Tech Community:Microsoft 365 Copilot(2025年11-12月アップデート)
- Microsoft 365 Blog:Ignite 2025(Copilot/Agent Mode関連)
- Microsoft Copilot Studio Blog(2025年11月アップデート)
- Microsoft Tech Community:Purview DLP for Copilot prompts(Ignite 2025関連)
- OpenAI Help Center:ChatGPT Enterprise/Edu リリースノート(Compliance Logs Platform等)
- OpenAI Help Center:ChatGPT リリースノート(アプリディレクトリ)
- OpenAI Help Center:Workspace settings(AI policy modal)
- Google Workspace Updates:Ask Gemini in Meet(展開情報)
- European Commission:EU AI Act(禁止事項・支援文書)
- European Commission AI Act Service Desk:EU AI Act タイムライン
※本記事は一般的な情報提供であり、法務・監査の個別助言ではありません。最終判断は社内ルールおよび専門家にご確認ください。